内視鏡検査

内視鏡内科について

内視鏡内科では、食道、胃、十二指腸、大腸といった消化管に関わる診療を専門的に行います。診療対象の疾患は幅広く、胃腸炎などの急性疾患から胃がんや大腸がんといった命に関わる重大な疾患まで含まれます。日本人の死亡原因のトップはがんであり、その中でも胃がんや大腸がんは男女ともに臓器別の死亡者数で上位を占めています。初期の胃がんや大腸がんは無症状ですが、早期に発見されるほど完治の可能性が高くなります。当院では適切な検査を通じて疾患の早期発見と鑑別を行い、丁寧な治療を提供しております。お腹の症状でお困りの際は、我慢せずにお気軽にご相談ください。

内視鏡検査が勧められる主な症状

このような症状がある方は胃内視鏡検査をお勧めします

胃内視鏡検査でわかる病気

このような症状がある方は大腸内視鏡検査をお勧めします

大腸内視鏡検査でわかる病気

日常的に起こりやすい症状でも、内視鏡検査を行うことで重大な病気の早期発見につながることがあります。お腹の不調や気になることがございましたら、何でもお気軽にご相談ください。

主な病気

逆流性食道炎

胃の内容物とともに強酸性の胃液(胃酸)が食道に逆流し、食道の粘膜に炎症を引き起こす病気です。胃酸が過剰に分泌されたり、逆流を防ぐ機能が十分に働かなかったりすることで発生します。胃酸が喉まで上がり、酸っぱい感じがしたり、胸やけや喉のヒリヒリ感といった不快感が続くことがあります。喫煙や飲酒といった生活習慣、加齢、肥満、姿勢、そして食道裂孔ヘルニアなどが原因として挙げられます。

食道裂孔ヘルニア

食べ物は口から食道を経て、胸とお腹の境界にある横隔膜を通り胃に達します。この横隔膜には食道が通るための穴があり、これを食道裂孔と呼びます。食道裂孔が緩んで胃の一部が胸部に逸脱する状態が食道裂孔ヘルニアです。この状態では、胃の内容物や胃酸が食道へ逆流しやすくなり、逆流性食道炎の原因となることがあります。食道裂孔ヘルニアの逸脱具合や逆流性食道炎の炎症の程度は、内視鏡検査によって診断することができます。

バレット食道

バレット食道とは、胃酸の逆流により食道粘膜が反復的に炎症を起こし、細胞が変性する病気です。主な症状は胸やけや胸痛で、特に夜間に胸痛が顕著です。この状態ががん化すると、それをバレット腺がんと呼びます。早期発見のためには、定期的な内視鏡検査がバレット食道の管理において有効とされています。

ヘリコバクター・ピロリ感染症

ヘリコバクター・ピロリ菌は、通常は幼少期に口から侵入し、胃の粘膜に定着します。これが原因で萎縮性胃炎が引き起こされ、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の発症リスクが高まるだけでなく、胃がんの発症リスクも増加します。内服薬による除菌治療を行うことで、胃潰瘍や十二指腸潰瘍を予防し、胃がんのリスクを低減することが期待されます。

急性胃炎

急性胃炎は、さまざまな原因により胃の粘膜に急激な炎症を引き起こす病気です。突然の腹痛や胃の不快感、吐き気などの症状が現れ、重症化すると吐血や血便も見られることがあります。急性胃粘膜病変として広範囲なびらんが生じることもあり、その原因としては過度の飲酒、刺激の強い食べ物の摂取、ストレス、ピロリ菌感染、アレルギー、または薬剤として鎮痛薬やステロイド、抗菌薬などが挙げられます。近年では内視鏡検査の普及により、胃粘膜の炎症状態を詳細に観察できるようになっています。

胃潰瘍・十二指腸潰瘍

胃や十二指腸の壁を深く傷つける胃酸や消化酵素によって引き起こされます。主な原因は胃粘膜がピロリ菌に感染することで知られていますが、薬剤やストレスなども要因となります。特に40代以降の方に多く見られますが、ピロリ菌に感染している場合は若い方でも発症することがあります。症状としてはみぞおちや背中の痛み、お腹の張り、吐き気、胸やけなどが現れます。潰瘍が深くなると出血することがあり、吐血や血便も発生する可能性があります。

機能性ディスペプシア(機能性胃腸症)

みぞおちの痛みや胃もたれなどの症状があるにもかかわらず、胃内視鏡検査や腹部エコー(超音波検査)で器質的な異常が見つからない場合、機能性ディスペプシアの可能性を考慮します。この状態は機能性胃腸症とも呼ばれ、主な原因は胃や十二指腸の運動の障害とされています。また、胃の拡張や胃酸や脂質の十二指腸への流入、不安や抑うつなどの心理的要因も関与していると考えられています。

萎縮性胃炎

主にピロリ菌感染によって引き起こされる慢性胃炎は、胃液や胃酸などを分泌する組織が縮小し、胃の粘膜が萎縮した状態です。この胃炎が進行すると胃がんのリスクが増大します。ピロリ菌の除菌により、胃がんリスクを低減できる可能性がありますが、除菌後でも未感染の人と比べて胃がんの発生リスクが高まるため、定期的な胃内視鏡検査が推奨されています。

胃粘膜下腫瘍

胃粘膜下腫瘍とは、胃粘膜の下に位置する粘膜下層や固有筋層などから発生する腫瘍の総称です。この種の腫瘍には神経鞘腫や平滑筋腫、脂肪腫などが含まれます。これらの腫瘍は通常、悪性化する頻度が低く、経過観察が一般的です。ただし、消化管間質腫瘍(GIST)は例外であり、胃がんなどと同様に生命予後を悪化させる可能性があります。そのため、胃粘膜下腫瘍の診断においては、まずGISTを正確に判別することが重要です。

便秘症

便秘症は、大腸や直腸の機能異常による「機能性便秘」、物理的な通過障害による「器質性便秘」、全身の病気の症状として現れる「症候性便秘」、または薬の副作用による「薬剤性便秘」に分類されます。これらの原因に応じて、適切な治療法が選択されます。便秘の症状が重く、強い腹痛や吐き気、発熱がある場合や便に血が混じっている場合には、自己治療を避け、速やかに医師に相談することが重要です。

感染性腸炎

腸管感染症は、ウイルス、細菌、寄生虫などによって引き起こされます。夏場の高温多湿な環境では細菌が主な原因となり、冬場にはノロウイルスなどのウイルスが多く見られます。細菌性の代表的な病原体には、サルモネラ、腸炎ビブリオ、カンピロバクター、腸管出血性大腸菌(O‐157)などがあります。ウイルス性の感染症にはノロウイルス、ロタウイルス、エンテロウイルス、アデノウイルスなどがあります。一般的な症状としては、下痢や腹痛が主であり、他にも下血・血便、発熱、悪心・嘔吐、食欲不振などの症状を伴うことがあります。

過敏性腸症候群(IBS:irritable bowel syndrome)

お腹の痛みや体の不調に加えて、数カ月以上にわたって下痢や便秘が続く場合、過敏性腸症候群が疑われます。この症候群の原因は明確にはわかっていませんが、ストレスなどの心理的要因が関与していると考えられています。また、腸内細菌のバランス、食物アレルギー、感染性腸炎なども原因として考えられています。

クローン病

遺伝的要素も関与している可能性がありますが、過敏性腸症候群の明確な原因はわかっていません。この症候群は全身の消化管に浮腫や潰瘍を形成し、様々な症状を引き起こします。主な症状には腹痛と下痢があり、他にも発熱、栄養障害、血便、肛門病変(例えば痔ろうなど)が現れることがあります。難病に指定されていますが、適切な治療によって症状を抑制し、日常生活を健康な人と同様に送ることが可能です。

潰瘍性大腸炎

潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜に主にびらんや潰瘍を形成する疾患です。症状としては下痢や血便、腹痛、しぶり腹(便意があっても排便できないことがある)、重症化すると発熱、体重減少、貧血などが見られることもあります。この疾患は難病に指定されており、明確な原因は分かっていませんが、適切な治療によって症状を抑制することが可能で、健康な人とほとんど変わらない日常生活を送ることができます。

大腸ポリープ

大腸粘膜に隆起する組織を大腸ポリープと呼びます。大腸ポリープは大きく腫瘍性と非腫瘍性に分けられます。非腫瘍性ポリープの多くは過形成性ポリープと呼ばれ、その他にも炎症性ポリープや過誤腫性ポリープなどがあります。一方、腫瘍性ポリープの多くは良性の腺腫ですが、中には悪性の大腸がんも含まれます。治療の対象となるのは主に腫瘍性ポリープであり、非腫瘍性ポリープの多くは治療を必要としません。

肛痔疾患(裂肛・痔核)

排便時に感じる肛門の痛みや出血は、痔核(いぼ痔)や裂肛(切れ痔)の可能性があります。治療としては、座薬や軟膏を用いた処置や、便をやわらかくするための整腸剤や緩下剤の服用が考えられます。特に便に血が混じる場合は、大腸がんや直腸がんなど他の病気の可能性もあるため、早めの受診をお勧めします。

食道がん

食道がんは、主に飲酒や喫煙が危険因子とされています。初期段階では症状がほとんどなく、進行すると食事を摂る際に胸がしみたり、つかえたり、胸痛が現れることがあります。早期に発見すれば、内視鏡治療を含む低侵襲な治療が可能です。飲酒や喫煙をしている方やバレット食道の診断が出た方は、定期的に胃内視鏡検査を受けることをお勧めします。

胃がん

日本では胃がんの発生が欧米に比べて多い傾向があります。一般的な胃がんは、胃炎や胃の粘膜の萎縮から発生すると考えられています。主な原因はピロリ菌感染ですが、喫煙や塩分の過剰摂取、栄養バランスの偏った食事も関与しているとされています。早期の胃がんや特殊なタイプの胃がんを見つけるためには、内視鏡による詳細な観察が不可欠です。現代では内視鏡診断・治療の技術が進歩しており、胃がんの早期発見と効果的な治療が可能ですので、定期的な内視鏡検査を推奨します。

大腸がん

高齢化社会や食生活の欧米化など、複数の要因が絡み合い、大腸がんによる死亡者数は増加しています。大腸がんは自覚症状が乏しく、無症状のまま進行することがあります。症状が現れてから診断されると、内視鏡治療などの低侵襲治療が適用できない場合があります。大腸ポリープの早期発見と切除が大腸がんの予防につながるとされており、排便異常や血便が見られる場合、便潜血反応が陽性である場合は、定期的な大腸内視鏡検査をお勧めします。

胃カメラ・大腸カメラ

内視鏡検査とは、胃や腸などの消化器官の内部をカメラ付きの細い管である内視鏡で直接観察する検査です。当院では、内視鏡検査にも高い技術と経験を持っています。内視鏡検査は、消化器官の病気の診断や治療に有効な方法であり、早期発見や予防にも役立ちます。当院では、患者様の負担を軽減するために、鎮静剤を使用した無痛内視鏡検査を行っています。

内視鏡結果のご説明、検査報告書のお渡し

当院では、内視鏡検査の結果を検査報告書としてお渡しています。検査報告書には、内視鏡で撮影した画像や所見、診断が記載されています。検査報告書は、わかりやすく説明するための資料としてお渡しします。また、検査前後には、医師や看護師が説明やアドバイスを行いますので、内視鏡検査に関するご質問やご不安がおありならば、遠慮なくおご質問ください。

内視鏡検査の所見例

発赤した食道癌

食道と胃の境 食道炎

胃体部 アニサキス虫体

胃体部 胃癌

大腸ポリープ

通常光(白色光)

通常光では淡い発赤ですが

特殊光-1

同じところを空気量調整し特殊光LCIにて観察

特殊-2

同じところを特殊光BLIにて血管と表面構造を観察

ポリープ切除術

1

IS型といわれる大腸ポリープです。

2

スネアをポリープに引っ掛けます。

3

スネアの輪を絞ります。

4

ポリープを切除、血液のにじみはわずかです。

内視鏡検査の所見例

発赤した食道癌

食道と胃の境 食道炎

特殊光で炎症を強調して観察

胃体部 アニサキス虫体

アニサキス虫体を取り去った後の腫れた粘膜

胃体部 胃癌

素を付け胃癌病変が分かり易くなる